果物からジャムへ。ジャムはパンと。

旅に出るといつもは苦手な朝が楽しみで、早起きになります。 普段はほとんど朝食を摂らないのに、つい欲張って食べすぎてしまいます。 でも、初めてのパリを訪れた時は、ホテルの朝食が質素で驚きました。食べ物はジャムとバターを添えたパン。温かい飲み物と、絞りたてのオレンジジュース。 そう、ヨーロッパで一般的なコンチネンタルブレックファストはとてもシンプルです。

高級ホテルに行けば、豪華なブッフェやアメリカンブレックファストも選べますが、それは特別なもの。 ついつい食べ過ぎてしまう旅先では、このスタイルが一番と思うようになりました。

パン好きにとっては、パンそのものに存分に向き合える時間でもあります。 ジャムとバターだけでも奥が深くて、バターそのもののミルキーさやコクに驚いたり、日本にはない果物のジャムに心奪われたり。 たまにではあるけれど、グッとくるジャムとの出会いが有りました。

例えば、スイスのオーベルジュで出会ったマルメロ(③)のジュレ(①②)。 バスクで羊のチーズに添えられたグリオット(④)のコンフィチュール(⑤)。 その地域ならではの果物の印象的な味わいが忘れられず、なんとか再現しようと挑戦するのが楽しみになりました。 お気に入りのパンを一番シンプルに味わうなら、バターそして、ジャムさえあれば大丈夫。 手作りの、お気に入りのジャムがあれば、朝の時間がもっと楽しみになります!

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イギリス生まれのサマープティングとは?

ジャム以外でもパンと果物を味わえるとびきりのメニューといえば、イギリスの伝統的なデザート“サマープティング”。
その名の通り、夏に収穫できる様々なベリーと食パンで作ります。
ブルーベリー、ラズベリー(①)、ブラックカラント、レッドカラント、ブラックベリー(②)等、ベリーの種類はお好みで……というよりも、その日に採れたものを使います。(③スイスの果樹園にて、④フランスの夏のいちご、⑤長野の夏のへびいちご)

たっぷりのベリーを砂糖で煮て、食パンを敷き込んだ型にジュースごと流し込んで冷やし固めれば完成です。
パンは固くなった古いもので、むしろ乾燥しているほうが水分を吸いやすくていいのだそう。
これは、ブリオッシュにラム酒入りのシロップを染みこませるスイーツ“ババ”(⑥ババ発祥とされるパリのストレールにて)と同じですね。

作り方だけ聞くと、果汁を吸ってべちゃべちゃになったパンはあまりおいしそうには思えないかもしれませんが、パンはしっとりのどごしがよく、冷たくてさらりといただけます。
夏真の食欲のない時期には、パンとジャムよりも、サマープティングがおすすめ!
だまされたと思って、一度挑戦してみてください。

サマープディング

材料(200mlのグラス2個分)
食パン(6枚切)
3枚
冷凍ミックスベリー
250g
はちみつ
80g
ぶどうジュース
100ml
レモン果汁
小さじ1/2
粉ゼラチン
5g

トッピング:
マスカルポーネ
70g
はちみつ
7g
ブルーベリー、ラズベリー
適量
ミント
少々
  1. ※ここでご紹介するのは作りやすくアレンジしたレシピです。本来はドーム状の型に食パンを敷き詰めてから、砂糖で煮たベリーを流し込んで作ります。ゼラチンも使いません。
    よりデザートらしいビジュアルと、甘さ控えめに仕上げるため、パンとベリーを重ねてゼラチンで冷やし固めます。
  2. ※ぶどうジュースを赤ワインに換えると大人の味に仕上がります。朝食にはジュースで、夜のデザートには赤ワインを。いただく場面によって使い分けてもいいですね。
作り方
  • 冷凍ミックスベリー、はちみつ、ぶどうジュース、レモン果汁を鍋に入れてベリーが煮崩れない程度に軽く煮る。粉ゼラチンは大さじ1の水でふやかしておく。火を止め、ゼラチンを加えて溶かす。
  • 食パンはカップのサイズに合わせて、3 枚ずつ丸形にくり抜く。
  • 1 をザルに上げ、果汁とベリーに分ける。2 の食パンにたっぷりと果汁をしみこませ、カップに食パンを敷き、ベリーを入れ、さらに食パンとベリーを順に重ね、食パンで蓋をする。ラップをして表面をバットで押さえて平らにし、冷蔵庫で冷やす。
  • 型から出して皿にのせ、マスカルポーネとはちみつを混ぜ合わせたクリームをのせ、ブルーベリー、ラズベリー、ミントを飾る。
調理のコツ!
  • 角食パン
    きめ細かにしっとりと焼き上げられた角食パンを使いましょう。パンは少し日にちが経って固くなっていても大丈夫です。上品に仕上げるため、耳は使いません。
    丸くくり抜く為、切れ端が残ってしまいます。耳や切れ端などはフードプロセッサーにかけてパン粉にして、冷凍しておきましょう!

POINT

冷凍ミックスベリー
冷凍ミックスベリー

日本ではフレッシュなベリーはちょっと高級ですが、冷凍ミックスベリーなら手軽!季節によってはフレッシュなものと冷凍を組み合わせてもOK。
甘さ控えめに仕上げるため、ぶどうジュースとはちみつを使い、ゼラチンで固めています。より本格的に作る場合は、ベリーとグラニュー糖を甘く煮込んだゆるめのジャムを合わせます。余分な水分をパンが吸い、ペクチンが作用してとろみがついたベリーは冷やしている間にゆるく固まります。

アレンジレシピ

あんずジャム

あんずジャム

初夏から秋にかけては、ジャムに適した果物が続々と登場します。
おいしい時期は短いので、旬を逃さないように作ります。
初夏にはグリオット(サワーチェリー)とあんず、真夏にはプルーンとプラム、秋にはマルメロが我が家の定番です。 一番オススメのジャムは、あんず。 そのままだと酸味も甘みも今ひとつで、ぼんやりした味わいなのですがグラニュー糖と合わせて煮ると、ググッと味わいが締まります。 バターと一緒にパンに塗るだけでもいいですし、マスカルポーネと合わせたタルティーヌはホームパーティーでも喜ばれます。
どんな果物でも基本は大きく変わらないので、この作り方をベースに季節の果実で挑戦してみてください。

材料(作りやすい分量)
あんず(種を抜いて)
500g
グラニュー糖
300g
※果物の正味量を計量し、その60%のグラニュー糖を合わせる。
  1. ※果実の種類によって酸味が足りない場合は、レモン果汁を少々加えると味わいのバランスがよくなります。
作り方
  • あんずはよく洗い、半割りにして種を取ってからさらに4等分のくし切りにする。あんずの60%の重量のグラニュー糖を計量する。鍋にあんずとグラニュー糖を入れて混ぜ合わせ、あんずの水分が出るまで2時間ほど置く。
  • 種をお茶パックに入れるかガーゼに包む。
  • ①と②を鍋に入れ、中火にかけてアクを取りながら煮る。
    はじめは強めの中火で、沸いてきたら少し火を弱めるとよい。とろ火にはせず、加熱時間は15分を目安に仕上げる。
  • ③から種を取り出し、ザルに上げて水分を絞り出す。絞り出した水分は鍋に戻す。つやが出るまで煮る。
  • 煮沸消毒した保存瓶に入れる。

POINT

① あんずとグラニュー糖を馴染ませる。
① あんずとグラニュー糖を馴染ませる。

切ったあんずは鍋に入れてグラニュー糖を合わせます。時々混ぜながら2時間ほど置くと、あんずの水分が出てグラニュー糖が溶けて馴染みます。こうしてから煮ると、焦げ付きにくく、短時間の加熱で仕上がります。

② 種も一緒に煮る。
② 種も一緒に煮る。

果物は皮や種の部分にペクチンが多く含まれ、糖と酸と作用することでジャムらしいとろみがつきます。皮付きでよい果物は皮ごと、また取りのぞいた種も煮込んでペクチンを抽出しましょう。お茶パックやだしパックを2重にして入れると手軽です。ザルに上げてへらでギュギュッと絞り出してペクチンを含んだ水分は余すことなく鍋に戻しましょう。

アレンジレシピ

COLUMN:フランスのタルティーヌとイギリスのトースト

COLUMN:フランスのタルティーヌとイギリスのトースト

“タルティーヌ”と聞くと、カンパーニュで作るフランス風オープンサンドを思い浮かべる方が多いようですが、もともとはパンにジャムやバターを添えたもの(つまり朝食!)です。

バゲットやカンパーニュにジャムとバターを添えると、フランスの朝食(①パリのル・パン・コティディアン)になりますが、パンを薄切りのトースト(②香港のペニンシュラホテル)にするとイギリスっぽくなりますね。
イギリスのトーストは「薄くてカリカリ」。ちなみにイギリスのティーサンドイッチも、パンは薄ければ薄いほど上品とされます。

日本では厚切りのトーストも人気がありますし、サンドイッチだって厚切りのパンを使ってもおいしいものがあります。イギリスでは何故薄くするかというと、そもそものパンが違うから。 パン、というよりもパンを作る粉のタイプが違います。
イギリスのホワイトブレッドも、フランスのパンドミも、日本の食パンと比べるとギュッと詰まった感じで固めです。日本の食パンは、しっとりもっちりふんわりタイプが多いので、逆に薄くは切りにくいですし、薄すぎると頼りない気がします。

イギリス製のポップアップトースターは薄切りパン用に作られているので、日本の厚切りパンは入りません。もうひとつ、イギリスのホテルやカフェでよく見かけるトーストラックも薄切りしか入りません。厚切りだと1枚で充分ですが、薄切りだと2〜3枚はいただきたいところですね。